2007年8月30日木曜日

デザインによる「EMPTINESS」の世界

なんとなく手にした本、原研哉さん著書「デザインのデザイン」。

そこで、無印良品の一枚のポスターと出会う。

コンセプトは「EMPTINESS(エンプティネス)」。
原さんの説明では”「からっぽの器」という意味で、コミュニケーションの際にこちらからメッセージを発信するのではなく、相手が持っているメッセージを受け止め、それを受け入れていくという考え方”だそうです。

それを表現するために完璧な地平線を目指し、南米ボリビアの「ウユニ」の塩湖へ。
そこには四国の半分ぐらいの面積のまったいらで真っ白な塩湖が。
そこで5日間の撮影の結果がポスターが出来上がった。

たった一枚のポスター。確かに写真には、ある瞬間が収められている。しかし、人の記憶にその映像が埋め込まれると永遠の時をえることができる。
後は、妄想をするタイミングで記憶に収められた地平線の景色を料理するだけである。
どこにも逃げ場のないこの地平線にどう向き合うかは自由である。
たぶんそれが「EMPTINESS」なのだろう。
私は、精神を溶け込ますキャンパスとしてこのポスターの映像を使いたいと思う。

本の中では、水のエリアの鏡面の地空も印象的だが、どこか夢のように美しすぎて大地のリアリティがない、と記述され「白い台地に雲ひとつない青空」のポスターしか掲載されていなかったが、実際は鏡面のポスターも存在しているみたいだ。

2007年8月24日金曜日

エントロピーの法則を補うもの

高校物理でエントロピーの法則を学んでから、宇宙を支配する絶対的法則として捉えていた。
秩序から混沌へ、その流れは一方通行で不可逆。
それが、息としいける物を支配しているのだと考えていた。

が、最近読んだ「禅的生活」でその考えは脆くも崩れ去った。

混沌からの秩序への流れが存在する、そうした考えを提唱した人がいたのだ。
プリコジン、散逸構造論でノーベル賞をとった大先生。(勉強不足で恥ずかしい限りです。。。)
プリコジンは、わずかな確立ながら、自然現象のなかにはエントロピーの増大(無秩序率の拡大)に逆らって再結晶化(秩序化)する分子運動もあるのではないかと考えた。
そしてその可能性を「ゆらぎ」と定義した。

プリコジンについては今後勉強するが、「ゆらぎ」を内包した世界。
それが現実的な世界ということなのだろう。

2007年8月22日水曜日

ルネ・マグリットの世界感

シカゴ美術館の続き。

ルネ・マグリットの作品は何品か展示されていたが、以前から気になっていた、「Time Transfixed」を紹介。

実際、ゆっくり眺めてみると暖炉に吸い込まれる汽車の煙、汽車の影、そして時計の指す時間が気になって仕方がなかった。

暖炉には発生した煙を屋外に出すために煙突とつながっている。(サンタクロースが進入する道である)だから、汽車から出ている煙が暖炉に吸い込まれるのは違和感がないのだが、暖炉からだいぶ飛び出した状態を考えると、煙がすべて吸い込まれるのには無理がある。(そもそも、汽車の存在に違和感を感じるかもしれないが)

また、汽車の影。なぜか、次元が違うのか汽車の影だけ角度が違う。だからいっそう汽車が引き立つ。影が汽車の存在を証明しているのだ。

そして、時計の指す時間。12時43分をさしていると思われる。個人的には12時34分にして、12:34!!だと気持ちがいいのだが、12:43なのである。なんともいえない時間である。

このように、正解の無いコトを考えるのは面白い。(ほんとは正解があるのかもしれないが)
これが本当の自由なのだろう。自らに由る(由来する)自由がそこにあるのだ。

ちなみに、ルネ・マグリットの作品は他に、
「Empire of light」と「The Great Family」が大好きです。



2007年8月16日木曜日

イブ・タンギーの世界

シカゴといえば、シアーズタワーではなくシカゴ美術館。
ということで、シカゴに訪れたタイミングでシカゴ美術館を訪問。素晴らし作品の数々と出会った。

まずは、イブ・タンギーの作品紹介(Untitled,1940)。
彼の作品は無条件に好きだ。
個人的な感覚(解釈)だが、彼が描く絵画には時間の流れが感じられない。
荒涼とした大地か砂漠かよくわからない空間に、無機物か有機物だか得体の知れないものが存在し、それと、何を暗示しているかわからない直線が存在している。

その世界を見ているのが心地いいのだ。
自分の頭の中にある知識と経験という記憶をイブ・タンギーの描いたキャンバスに重ねるのはとっても 刺激的である。
なんだが、自分の脳の中に新たな世界が作り出されていく感じだ。

今回の出会いでは、作品の中の直線がとても気になった。
なぜかというと、飛行機に乗っているときにアメリカの大地を見ると、道路、建物など人工的なものには直線が存在するが、河川、大地など自然的なものは曲線しか見当たらないのが気になった。雲の上から見ると、人間が地球に、直線的な落書や、いたずらをしているように見える。
もし違う生物が地球を支配したらどうなるだろう?直線は消え去るのだろうか?そんなことを考えていたため、"直線=人間活動の象徴"に思え、直線に敏感になっていたのだ。
(ちなみに、鉛筆で風景画を描く時、建物などの人工物を描く時、直線を利用することが一般的)

今回は、絵の中の直線に人工的なにおいを感じた。
これは超現実における人間の活動軌跡なのではないだろうか?
そんなことを考えながらシュルレアリスティックな世界に思いを巡らせた。

2007年8月15日水曜日

Fortune Cookie

チャイニーズレストランで料理がすべて終わった後に出されるものに、
中に占いの紙切れが入っているお菓子「Fortune Cookie」がある。

この前、その紙切れに
More art in your life at this time will help you feel better.
と書かれていた。

素敵な言葉との出会いでした。

2007年8月14日火曜日

DEVIL'S ROPE MUSEUM

Route66の道中、世界で唯一存在する有刺鉄線のミュージアム、「DEVIL'S ROPE MUSEUM」を訪問。

有刺鉄線というと刑務所や休遊地を囲う鉄線で、誰しも小さい頃に痛い思いをして、ダークなイメージを持っている気がする。

でも、実際はアメリカで放牧していた牛や馬を管理するために発明されたもの。
(その結果、カウボーイはその職を失ってしまったのだが。。。)
そんな歴史を紐解きながら有刺鉄線を眺めると、新しい魅力が迫ってくる。




形状も豊富に存在し、並べてみると芸術的オブジェクトだ。(約2,000種類も異なる形状が存在)

生物に対して威圧するその存在感は、形状ごとに異なったオーラを発している。

仕事に失敗して一人になりたいときに放つ"ほっといてくれオーラ"と、なにかに集中したいときに放つ"じゃまをしないでくれオーラ"とでは、有刺鉄線の形状で表現する場合、どれになるのだろう?
そんな考えに耽れる場所でした。

ちなみに、「DEVIL'S ROPE MUSEUM」では有刺鉄線の標本が購入可能。

2007年8月13日月曜日

DesperadoとRoute66

今年の夏はシカゴからロサンゼルスまでRoute66をドライブした。
走行距離、約4500km。(途中グランドキャニオンに寄り道をしたが。。。)

なぜ、Route66をドライブすることになったのか、
それは、スカパーで放映されたROUTE66-栄光と哀しみのマザーロード-[全13回]に偶然(必然?)出会ったから。

そして、その番組のオープニングテーマが、The Eaglesの「Desperado」。

~何もない荒涼とした大地に 一本の道が走る
駅馬車が駆けた荒野を やがてT型フォードが行く
華やかなりし モータリゼーション
西へ 人々は大いなる移動を始める
砂漠の中に 給油所ができ モーテルが建ち ダイナーがオープンする
教会よりも先にドラックストア生まれ 町となっていく
誰の顔にも笑顔があった時代~
とのナレーションの後ろに「Desperado」がかかっていた。

今回の旅のテーマソングは「Desperado」。
「無法者」あるいは「ならず者」と訳されるDesperadoには、時代に流されず己が道に進んだ時代のはみ出し物の姿が浮かぶ。
それを追い求めてみよう。そう思いハンドルを握る。











そして、たどり着いた地、最西の地はサンタモニカ。
今は有名な観光地になっているため、世界中から人々が集う。
観光地のため明るく、華やいだ雰囲気だ。
はるばるシカゴから車を飛ばしてきた人などいない。
1人だけ醸し出す空気が浮いている気がした。

なんとなく歩いた、サンタモニカピアの桟橋。
最先端のところまで歩いていくと、突然あの曲が聞こえてきた。
そう、「Desperado」 。

たまたま、ストリートパフォーマンスの人が演奏し始めたのだ。
なんという、偶然だろう。
身震いがした。

久々に心の底から震えた瞬間だった。
たぶんあの瞬間は、一生忘れないだろう。

そう、時代に逆らって己が道を行く、「Desperado」を自分の中に見つけた瞬間は。

2007年8月4日土曜日

Two Majesties

ミルウォーキー美術館からもう1作品紹介。

Jean-Léon Gérôme 氏の「Two Majesties」

私がロマンチストであることがばれてしまうかもしれないが、、、(ちなみに男は皆、ロマンチストだと思うが)、
地平線まで見渡せる壮大な自然の中、沈み行く夕日を見つめている一匹のライオン。百獣の王が夕日に向かって何を思うのか、そんなことを創造すると楽しくなる作品です。

きっと、今までの出来事を振り返り、そして、これから進むべき道について自然に問いかけているのではないだろうか。
自然と向き合うと、どんな存在も小さく映る。そんな世界で自分を見つめなおしてみたいものです。


ちなみに、ライオンの凛々しいアップも追加。